

2014/10/16
[アパレル・企画] 『モノづくり』
クリエイティブディレクターの池見です。
今考えるべき『モノづくり』に関わるときの姿勢とは…。
***
私は長い間、服を「作る」ということに関わってきました。
つまり、『モノづくり』。
服は見るモノでも、飾っておくモノでもなく、
「着る」モノです。
だから、服を作るということは、
眺めて美しいだけの形をつくることでもなければ。
寸法表に並んだ数字をつじつま合わせする作業でもない。
その服に袖を通したとき、
スッとカラダになじんだ感じを味わい、
ずっと身に纏っていたい!という気持ちにさせる。
その服を着て、何か楽しいことをするワクワクしたイメージがどんどん生まれてくる。
そんなモノを作ること。
「着心地」の良い服ができあがるには、
素材、型紙、縫い合わせる糸など、すべての要素が調和しなければならない。
そうして初めて最高の「着心地」生まれるわけです。
あるスポーツブランド向けにデザインしたブルゾンのサンプルがあがってきました。
スポーツするための服なのに、レディースの服なのに、
立体感のカケラもない、丸みもない、ぺったんこなブルゾン…。
イメージしたものから遥か彼方に存在するモノになっていました。
平に置いたときはデザイン画通りの見た目でとてもカッコイイ。
それなのに、ひとたび袖を通すといろんなところがヒキツレて、
動く気もおきない。
どんなに見た目が美しくても、
これではお客さんは絶対に買わない。
そんなこと、子供だってわかる。
でも、大きな会社が手がける「モノづくり」の中に、
こんなことが平気でおこる。
なぜか。
このような現象をもたらす魔物の名前は『効率化』。
効率よく、つまり、できるだけお金をかけずに利益を上げる。
この魔物が、モノづくりに関わる人たちの会話を減らし、
本当に伝えなければならないイメージが削ぎ落とされ、
完成品を全く異なるアウトプットとして存在させることになる。
今のアパレルの世界での『モノづくり』のしくみは、
すべて数値化し、その数値を許容範囲に収めることに注力ことで成り立っている。
素材の物性。細かく指示された寸法。
指定された数値が守られていれば、
たとえ着心地が悪くても、その服は商品として
「とても優秀である!」といえる。
お客さんが買うか買わないかは別として。
企業やブランドのグローバル化が進み、
このような方法がグローバルスタンダードになっています。
この状態を、お客さんが本当に望んでいることなのかどうか、
今一度立ち止まって考えるべきだと心から思う。
大きな規模でモノを動かしている企業や
それを取り巻く人たちの中に、
本当に「着心地」の良い服の作り方を知っている人は
少ない…と私は思う。
みなさんは、どう考えますか?


